四百年の恋

 ……福山龍之介と名乗る男が圭介たちの前で朽ち果て消えていったのは、去年の落葉の時期。


 その体験は鮮烈で、特に真姫はしばらくの間ショックから立ち直れなかった。


 (それもそのはずだ。自分のことを愛してくれていた男、自分自身も好意を持っていた男が、実は亡霊で。見ている目の前で朽ち果て、そして消えていったのだから)


 その衝撃は大きかった。


 (一緒にいた俺もまた、未だにあの光景が瞼の裏から離れない)


 だけど、そこから立ち直らなくてはならないし。


 壊れてしまいそうな真姫を守らなければいけない、圭介はそう思った。


 そして真姫を救うのは、同じ思いを共有する自分にしかできないとも。


 初雪の頃を過ぎ、根雪になろうという頃。


 圭介は改めて、真姫に想いを打ち明けた。


 かつて腕力に物をいわせて、暴行まがいの手段で真姫を自分のものにしようとした。


 その件は十分に謝罪して、改めて真姫に気持ちを一途に伝えたところ。


 真姫は戸惑いながらも、圭介のそばにいる道を選んだ。


 立ち直るには、一人では心細すぎたのかもしれない。


 真姫は圭介を拒まなかった。


 それから共に過ごす時間が長くなり、心の隙間を埋めるかのように距離も近づき。


 クリスマスイヴの夜、初めて結ばれた二人。


 真姫は福山とはまだ何もなかったと圭介はその時知った。


 たとえ真姫がすでに福山に体を許していたとしても、過去もろとも真姫を受け入れようと決意していたが、好きな女が自分以外を知らないと分かり圭介は安堵した。