この負傷により、圭介はバドミントンができなくなった。


 夢のインカレ出場も、実業団入りも……全てが夢と消えた。


 未だに競技復帰もできていないどころか、歩行にも困難をきたしていた。


 (たとえ選手として活躍するのは無理でも、趣味としてプレーは続けていきたい。子供の頃から、バドミントンが好きだったから)


 そう思えるようになるまでは、かなりの時間を要した。


 一時は絶望のあまり、かなり荒れた毎日を送っていた。


 現実を受け入れられられず。


 だが圭介は、何とか立ち直ることができた。


 時の流れが徐々に心を癒してくれたのと、そして……。


 「また、悪い夢を見たの……?」


 飛び起きた際、大きくシーツを引っ張ってしまい、隣で眠る真姫を起こしてしまったようだ。


 「ごめん。ちょっと目が覚めて」


 「そう……。あ、もう帰らなきゃ」


 寝ぼけた目で真姫は、枕元の腕時計を見た。


 「時間なんか気にするな」


 圭介は真姫の手から、腕時計を取り上げた。


 「泊まっていけよ」


 「だめ、寮の管理人さんに」


 「彼氏とこういうことしてたって、伝えればいいだろ」


 帰ろうとする真姫を、圭介は強引に腕の中に連れ戻した。


 一度冷めた体に、再度熱を与える。


 そして唇を重ね、もう一度……。


 「だめ、外泊が続くと、寮から自宅に連絡が行くの。最近続いたから、これ以上はまずい」


 真姫の女子寮は風紀が厳しく、外泊が目に余る場合はチェックが入り自宅に電話連絡されることも。


 「……仕方ないな。じゃ送っていってやるから。その前に、最後にもう一回だけ」


 「……」


 無言は承諾の合図。


 冷えた体を温めるかのように、再度二人は体を重ねた。