……例年福山城の花見の宴は、前夜祭と本祭の二日間だけ。
しかしこの年は、福山冬悟と月姫との婚約祝いも兼ね、三日三晩続けられることになっていた。
三日目の夜。
二人の正式な婚約発表が、ついに当主である福山冬雅から直接発せられることとなっていた。
当事者である二人は、その喜びの瞬間に立ち会うべく。
胸の高鳴りを必死に抑えながら、二人並んで宴の間へと入った。
そして殿・冬雅の到着を待つ。
というよりもむしろ、二人の人生の節目となる、喜びの知らせの公布を待ちながら。
程なく冬雅が到着した。
お付きの小姓たちに先導されるように。
「今宵は、花見の宴の最終日だ」
広間に顔を揃えた一同は、後の乾杯の瞬間のための杯を手にしている。
侍女たちがそこに、酒を注いでいる。
「皆の者、心ゆくまで楽しむがいい。……その前に皆に知らせることがある」
(ついに私たちの婚約が殿の口より、正式に発表される……!)
姫の胸の鼓動が、静まり返った広間内に響き渡りそうだった。
「……まず、我が弟・冬悟」
「はい」
冬雅は冬悟を御前に招き寄せた。
「この度そなたを、」
冬雅は朗々と、宣言を始めた。
(その次に続く言葉は、冬悟さまと私の婚約の旨!)
姫はそう信じて疑わなかったのだが、
「福山家の、次期当主の座に命ずる」
「えっ?」
突然、予期していなかった次期当主の地位を約束され、冬悟も驚きを隠せずにいた。
しかしこの年は、福山冬悟と月姫との婚約祝いも兼ね、三日三晩続けられることになっていた。
三日目の夜。
二人の正式な婚約発表が、ついに当主である福山冬雅から直接発せられることとなっていた。
当事者である二人は、その喜びの瞬間に立ち会うべく。
胸の高鳴りを必死に抑えながら、二人並んで宴の間へと入った。
そして殿・冬雅の到着を待つ。
というよりもむしろ、二人の人生の節目となる、喜びの知らせの公布を待ちながら。
程なく冬雅が到着した。
お付きの小姓たちに先導されるように。
「今宵は、花見の宴の最終日だ」
広間に顔を揃えた一同は、後の乾杯の瞬間のための杯を手にしている。
侍女たちがそこに、酒を注いでいる。
「皆の者、心ゆくまで楽しむがいい。……その前に皆に知らせることがある」
(ついに私たちの婚約が殿の口より、正式に発表される……!)
姫の胸の鼓動が、静まり返った広間内に響き渡りそうだった。
「……まず、我が弟・冬悟」
「はい」
冬雅は冬悟を御前に招き寄せた。
「この度そなたを、」
冬雅は朗々と、宣言を始めた。
(その次に続く言葉は、冬悟さまと私の婚約の旨!)
姫はそう信じて疑わなかったのだが、
「福山家の、次期当主の座に命ずる」
「えっ?」
突然、予期していなかった次期当主の地位を約束され、冬悟も驚きを隠せずにいた。



