四百年の恋

***


 春が訪れた。


 再び福山城の桜の木々が、花を付け始めた。


 去年の桜の時期、初めて福山冬悟に出会った頃を姫は思い出す。


 「姫!」


 安藤の叔父の屋敷に滞在している姫の元を、冬悟が訪れた。


 「会いたかった……」


 久しぶりに出会った冬悟は、少し痩せたような気がした。


 顔つきも精悍というか、大人びていて、やはり戦場を経験すると違うのかと姫は実感した。


 「名護屋城の乾いた空気の中で、ずっと姫を想っていた」


 久しぶりに二人で、安藤の叔父の屋敷内の庭園を歩いた。


 「一刻も早く姫の元に戻り……抱きたかった」


 その一言に姫は恥ずかしくなって、うつむいた。


 「太閤殿下はお亡くなりになりましたが、生前の謁見は叶ったのですか?」


 姫は話題を変えた。


 「名護屋へ向かう前、伏見城(ふしみじょう;京都府)に立ち寄って謁見した。やたら顔色がお悪いとは思ったが。まさかあんな急に、お亡くなりになられるとは」


 「太閤殿下は、どのようなお方だったのでしょうか」


 「織田信長(おだ のぶなが)公の跡目争いや、天下統一事業、そして朝鮮出兵などで多くの敵を倒してきたから、さぞかし残忍な人物かと予想していた」


 「はい」


 「だが直接謁見してみると、人当たりのよい、小柄な老人だった」


 「人当たりのよい?」


 それは意外だった。