「……」
突然で、そして一瞬のことだったので、姫は幻でも見ていたような気がした。
宴の席に戻り、宴が終わるまでの間中ずっと、姫はぼーっとして過ごしていた。
(あんな美しい男の人がいたなんて……。いったいどなただろう)
城の関係者か、招待客か。
そういえば誰かに「若様」と呼ばれていた。
あの装束からしても、武家の、しかも家柄の良い御曹司であることが推測される。
まさか、福山家の血筋の方だろうか。
「……」
この宴の進行役である叔父ならば、招待客全員を把握していて、あの貴公子が誰だか知っているかもしれないと姫は考えた
だがそんなこと尋ねようものなら大騒ぎになりそうな気がして、姫はそのまま黙っていた。
今夜の宴は前夜祭で、明日の日中に本祭がまたこの場所にて執り行われる。
(その際探してみるか)
探してみせるなんて約束、口先だけのものかもしれないけれど、
(でも見つけてほしい……!)
そんな想いに駆られる春の夜だった。
突然で、そして一瞬のことだったので、姫は幻でも見ていたような気がした。
宴の席に戻り、宴が終わるまでの間中ずっと、姫はぼーっとして過ごしていた。
(あんな美しい男の人がいたなんて……。いったいどなただろう)
城の関係者か、招待客か。
そういえば誰かに「若様」と呼ばれていた。
あの装束からしても、武家の、しかも家柄の良い御曹司であることが推測される。
まさか、福山家の血筋の方だろうか。
「……」
この宴の進行役である叔父ならば、招待客全員を把握していて、あの貴公子が誰だか知っているかもしれないと姫は考えた
だがそんなこと尋ねようものなら大騒ぎになりそうな気がして、姫はそのまま黙っていた。
今夜の宴は前夜祭で、明日の日中に本祭がまたこの場所にて執り行われる。
(その際探してみるか)
探してみせるなんて約束、口先だけのものかもしれないけれど、
(でも見つけてほしい……!)
そんな想いに駆られる春の夜だった。



