四百年の恋

 すると、


 「そのだんご、ネズミよけのために置かれていた、毒入りだんごだ。お前は間もなく苦しんで死ぬだろう」


 「ええっ!」


 貴公子の言葉に姫は混乱して、吐くべきか医師を呼ぶべきか考え、うろたえた。


 顔を青くしたり赤くしたりして慌てている姫を見て、その貴公子は笑い始めた。


 「冗談だ。それは単なるお供え物のだんご。昼のうちから置かれていたので、乾いて硬くなってしまっただけだ」


 「お供え物……」


 それを知って姫は、安堵すると同時に、たちの悪い冗談で私を死ぬほど驚かせた貴公子に怒りを感じた。


 「悪ふざけにも、限度があります!」


 そう言って姫は背を向け、立ち去ろうとしたのだけど。


 「悪い悪い。桜の枝を手折る悪い花盗人かと思って、様子を窺いに来たんだ。すると花盗人ならぬ、前代未聞のだんご盗人だったとは」


 貴公子は声を押し殺して笑っている。


 本来ならば悪いのは自分のほうなので、姫も恥ずかしくなってきた。


 「腹が減っていたのか?」


 「……」


 姫はうつむきながら、こくっと頷いた。

 「無理もないな。宴では酒が中心で、食べ物が手薄だから」


 「すみません。はしたないことをして」


 姫は謝った。


 「謝ることはない。それよりお前の名は?」