寒い。
眠い。
退屈。
お腹減った。
……姫の心はずっと、そんな事柄で埋め尽くされていた。
(お城の宴が、こんなに苦痛なものだとは知らなかった)
気軽にお喋りのできる友達もおらず、姫は孤独だった。
同行している叔母は、夫人仲間との交流にいそしんでいるし。
叔父は任務で忙しい。
姫は一人、広間の隅でぽつんと座っていた。
当分宴は終わる気配もない。
何よりお腹がすいていた。
お城の料理は、美味しいのだけど量が少ない。
上品過ぎて、全然物足りなかった。
(隣の姫君なんか、一口つまんだだけで残している。お腹すかないのだろうか。できるならもらいたいところだけど、ここでそんなことお願いするのもはしたないので、我慢我慢)
そ~っと。
周囲に気づかれぬよう、姫は広間を抜け出した。
(どうせ誰も、私になど目も留めていないのだから、心配する必要もないのだけど)
能の舞台も終了し、庭園は静けさに包まれていた。
と思いきや、桜を愛でる人々が庭に下り立っている。
女一人でこんなところをウロウロするのも好ましくないので、なるべく人目に付かないように物陰から姫は庭園に入り込んだ。
眠い。
退屈。
お腹減った。
……姫の心はずっと、そんな事柄で埋め尽くされていた。
(お城の宴が、こんなに苦痛なものだとは知らなかった)
気軽にお喋りのできる友達もおらず、姫は孤独だった。
同行している叔母は、夫人仲間との交流にいそしんでいるし。
叔父は任務で忙しい。
姫は一人、広間の隅でぽつんと座っていた。
当分宴は終わる気配もない。
何よりお腹がすいていた。
お城の料理は、美味しいのだけど量が少ない。
上品過ぎて、全然物足りなかった。
(隣の姫君なんか、一口つまんだだけで残している。お腹すかないのだろうか。できるならもらいたいところだけど、ここでそんなことお願いするのもはしたないので、我慢我慢)
そ~っと。
周囲に気づかれぬよう、姫は広間を抜け出した。
(どうせ誰も、私になど目も留めていないのだから、心配する必要もないのだけど)
能の舞台も終了し、庭園は静けさに包まれていた。
と思いきや、桜を愛でる人々が庭に下り立っている。
女一人でこんなところをウロウロするのも好ましくないので、なるべく人目に付かないように物陰から姫は庭園に入り込んだ。



