***
ついに花見の宴が始まった。
まず女性陣が宴の行なわれる大広間に通される。
大広間の端に、家柄の順番で座らされた。
当主・福山冬雅の家臣のゆかりの者とはいえ、家柄の低い月姫は一番奥。
つまり末席だ。
姫の叔父などの家臣たちが徐々に入ってきて、その次に福山家の人々。
最後に福山冬雅公。
殿の御前であるため、下々の者たちはひれ伏していなければならない。
おかげで殿がどんな顔をしているのか、姫にははっきり分からなかった。
顔を上げてからも、席が遠すぎてよく見えない。
(当然向こうも、ここに私が座っていることなど知る由もないし、気に留めもしないのでしょうね)
酒や料理が準備され、庭園の特設会場では能などの出し物が披露されている。
舞台の周りを、白や桃色の可憐な花をつけた木々が包み込んでいる。
(ああ、あれが桜か。美しいけれど儚げで、どこか物悲しい)
ちょうど満開を過ぎ、散り始めの時期なのだろう。
「綺麗……」
舞い落ちる花びら。
幻想的な光景に、姫は目を奪われていた。
ついに花見の宴が始まった。
まず女性陣が宴の行なわれる大広間に通される。
大広間の端に、家柄の順番で座らされた。
当主・福山冬雅の家臣のゆかりの者とはいえ、家柄の低い月姫は一番奥。
つまり末席だ。
姫の叔父などの家臣たちが徐々に入ってきて、その次に福山家の人々。
最後に福山冬雅公。
殿の御前であるため、下々の者たちはひれ伏していなければならない。
おかげで殿がどんな顔をしているのか、姫にははっきり分からなかった。
顔を上げてからも、席が遠すぎてよく見えない。
(当然向こうも、ここに私が座っていることなど知る由もないし、気に留めもしないのでしょうね)
酒や料理が準備され、庭園の特設会場では能などの出し物が披露されている。
舞台の周りを、白や桃色の可憐な花をつけた木々が包み込んでいる。
(ああ、あれが桜か。美しいけれど儚げで、どこか物悲しい)
ちょうど満開を過ぎ、散り始めの時期なのだろう。
「綺麗……」
舞い落ちる花びら。
幻想的な光景に、姫は目を奪われていた。



