「だけど、考えてみろよ。
あんな人なのに、いまだに奥方様がいないんだぜ。
きっともう、心に決めた人がいるか……なにか理由があるんだよ」


小太郎の言うとおり、陽炎様はもう成人と認められる15歳を過ぎている。今は16歳。

血統のいい子を残すため、とっくに奥方様をもらっていてもおかしくない。

なのに、陽炎様は誰とも夫婦になる気配がない。


「その理由だって、聞いてみなきゃ納得できないでしょうが」
 

村中の若いくのいちが、陽炎様の妻の座を狙っている。

まだ誰も彼の心を射止めてないようだけど、油断はできない。