あたしは小次郎と二人、陽炎様のお屋敷の裏庭に忍びこんでいた。
だって、堂々と門から行っても相手にされないのはわかっているから。
陽炎様は一族の中でも高位の忍の跡取り息子。
あたしはたくさんいる下忍の一人だもん。
屋敷中に張りめぐらされている罠を避け、あたしは茂みの影から、縁側で刀の手入れをしている陽炎様を見つめていた。
「やっぱり、素敵……」
一族の純粋な血統の証である銀髪に、紫色の瞳。
刀の目釘を確かめて、その刃を日の光にかざす腕は、筋肉がついているのに細身で無駄がない。
すっとした二重まぶたに、銀色のまつげが揺れる。