あたしと小次郎は、陽炎様の話に黙って耳を傾ける。
「実は、こんな俺にも心に決めた人がいたんだよ」
いた? ということは、過去形なの?
「彼女は俺の幼なじみだったんだ。1年くらい前……俺よりもずっと身分の高いお方のところに、急にお嫁に行くことになっちゃってね。なかば強制的に」
「そんな……」
「そうなって初めて、自分の気持ちに……彼女が好きだと気づいた。けれどもう、なにもかもが遅すぎて……花嫁道中を見送ることすら、できなかった」
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