「あ……幼なじみの小次郎です。どうしてもついていくって、聞かなくて」
「なんだよそれ! 俺がつきまとってるみたいじゃないか」
「実際そうでしょうよ」
小次郎と口げんかをすると、ふっと陽炎様が笑った。
「そうか、幼なじみか」
あたしを抱いたまま枯れ葉を踏んで歩く陽炎様が、一瞬空を仰いだ。
紫色の目が、さびしげに揺らぐ。
「お前が本気を見せてくれたから、俺も本当のことを教えようか」
そうして陽炎様は、静かに話しだした。
今まで誰とも夫婦になろうとしなかった理由を……。
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