「おっと」


そんなあたしをふわりと抱きとめてくれたのは、意外なことに陽炎様だった。


「大丈夫? ケガを見せてごらん」


耳のすぐ近くで響いた陽炎様の声に、ドキリとする。

しなやかな腕の中で、ドキドキしながらそれに甘えていると、陽炎様はあっさりと体を離し、あたしを地面に座らせた。


ちぇっ。もう少しくっついていたかったのになぁ。

口をとがらせると、陽炎様はふっと笑った。


「強いもののけの気配を感じたんだ。追ってきてよかったよ。お前に死なれたりしたら、俺の寝覚めが悪いからね」