くのいち初恋伝



「ええーいっ!!」


あたしはありったけの手裏剣を、煙の向こうの鵺に向かって投げる。


「そうだ、あきらめるな!」


陽炎様は高らかに笑うと、その懐から一本の苦無を取り出す。

軽やかに投げられたそれは、怒りで大きく開かれた鵺の口へと吸いこまれていった。


──キエエエエエ!


鵺の悲鳴が響く。

喉に刺さった苦無を吐き出すと、鵺はよろよろと木の上へと登っていく。

あたしはさらに攻撃するために、残りの手裏剣を投げようとした。

けれど……。


「まだやるの? 手負いのもののけに下手なことをすると、もっと痛い目にあうよ」


陽炎様はそれを手で制して、あたしを守るように言った。