「しゃべってる暇はないんじゃないの?」
そう言われたとたん、空がゴロゴロと鳴り、背筋を震わせる。
そうだ、今は鵺と戦っている途中だった……!
さっきの紫色の炎は、一族の中でも純血の一部の者しか扱えない、高度な幻術。
話に聞くだけで見たことのなかったその炎が、陽炎様の開かれた両手のひらから現れる。
「しっかり見てなよ。敵の前で、決して目を閉じちゃいけない」
陽炎様があたしと小次郎の前に立ち、両手を鵺に向ける。
炎は陽炎様の手を離れると、まるで弾丸のように、風を切って宙を飛ぶ。
帯状の雷を貫き、その炎は鵺に命中した。轟音が響き、白い煙が上がる。



