「俺はお前を心配して言ってるんだろ!」
こっちが大きな声を出したからか、小次郎はめずらしく声をあららげて、あたしの肩をつかむ。
驚いて声を失うと、小次郎はそっと手を離した。
「ごめん……でもお前、なんでそこまでして陽炎様の奥方になりたいんだ?」
「好きだから」
「どこが好き? 容姿か? 身分か?」
なんでそんなこと、あんたに言わなきゃならないのよ。
そう思いながらも、真剣な小次郎のまなざしから、逃れられない。
「……そんなの、わからないよ。確かな理由なんてないけど、あたしは陽炎様のおそばにいたいの」



