翌日、裏山に入っていくあたしのうしろを、小次郎がぶうぶう言いながらついてきた。


「槐、そろそろ気づけって。お前は断られたんだよ」


あたしは小次郎をにらみつける。


「そんなの、わかってる」


だいたい、陽炎様の出した条件は厳しすぎる。


鵺っていうのは、顔がサル、胴体がタヌキ、手足がトラ、尾がヘビっていう、伝説のもののけ。


この山で鳴き声を聞いたっていうウワサがあるだけで、実際に姿を見た忍は一人もいないみたい。


しかも、鵺の鳴き声は、トラツグミっていう鳥に似ているらしいし……。