「貢ぎ物?」
陽炎様は少し驚いたような顔をして、ひれ伏したあたしの顔を上げさせる。
「こんなところに忍びこむなんて、命知らずだね。どうしても俺に直接渡したいモノがあるってこと?」
「はい!」
「くだらないものだったら、承知しないよ」
紫の瞳を細めてにらむ陽炎様に、さっきとってきたばかりの猫又の皮を差し出す。
「もののけの皮か」
陽炎様は、興味深げに毛皮の模様や手触りを確かめる。
厳しかった顔が少しゆるんだ。
あぁ、やっぱり素敵……冴えた月光のような視線も好きだけれど、笑ったお顔も一度拝見したかったの。