大切なものはつくらないって言っていたくせに


「瀬田さんの言う通り、私はプロ意識に欠けてる。だからこんな風にいつも中途半端なんだ。連載だって、いつ打ち切られるかもわからないし、他に売り込んでる出版社だって全然いい返事もらえないし。」
遥は、迷子になった少女みたいに泣きじゃくる。
「彼に言われた。自分の夢の保険みたいに俺を利用するなって。うまくいかなかったら戻って来れるような場所にしてくれるなって。その通りだよね。」
ここで泣いている遥を抱きしめて、慰めの言葉を言えばいいのかもしれない。俺の方がお前のことをよくわかっていると言えばいいのかもしれない。
でも、結局俺はそれをしない。
「なあ、ここでタバコ吸っていい?ベランダ出た方がいい? 」
俺は遥の話題を遮るように言った。
「 いいよ。ここで吸っても。」
俺はそう言われてもベランダに出る。
「結構いい眺めだな。」
「うん。」遥は目をこすって、俺の横に立つ。
夕暮れのローマの街をしばらく二人で無言で眺める。