遥のアパートの扉をノックする。
フェルが俺に囁いた。
「チャンスよ。」
フェルは前から俺の気持ちに気持ちにきがついていた。 俺が好きだと言っていたくせに、いつのまにかフェルは俺のこの恋の味方になってくれていた。
遥に会いたい。 扉があくまでの時間、こんな風に高揚した気持ちになるのも初めてだ。
「誰?」
「俺だよ。祐樹。」
扉が開いて、遥のビックリした顔と普段見なれないダボっとしたグレーのスウェットに短パン。スラリと出ている生足にドキッとする。 ヤバいってコレ。
「フェルが心配して、おまえに弁当持っていけって。」
「あ、ありがと。」遥は袋の中を覗き込んで、「美味しそう。」といつものふあっとした笑顔になる。
なんだ、元気そうじゃないかよ。
「どうぞ。せまいけど。」
「え」
どうやって中に入ろうか考えを巡らせているところに、アッサリと遥は俺を部屋に入れるから拍子抜けする。
この間だってキスしたのに、こいつは全く動じてない。
ホントに俺の事、近所の兄ちゃんみたいな存在にしか思っていないんだよな。