「額賀さんから聞いているでしょ。 瀬田さんは、立派な作家さん。日本中の人が注目してる。
私は、やっと今夢を掴みかけたところ。 瀬田さんの大スクープに巻き込まれたくないの。だからもう、、、」

瀬田祐樹は、それを遮るように、私を壁に追い詰めてあの激しい目つきで見下ろす。

「あの時、俺は必ずあの映画の撮影が終わったら迎えに行くって言った。」
私は苦笑する。
「瀬田さんは、俳優さんだもの。 私もあの時は惑わされそうになっちゃった。
でも、後悔はしていないよ。 うーん、なんというか良い思い出? 」

「ふざけんな。おまえは、あの夜俺に落ちたんだ。」
「すごい自信。相変わらず、自分勝手だし。もうそっとしておいて欲しいの。」

「俺と結婚しろ。」
私は思わず吹き出して
「何、言ってるの?冗談、、、、」
「冗談じゃない。俺は本気だ。」
「じゃあなんで!? いなくなったの? イタリアに来れなかったとしても、なんで連絡くらいしてくれなかったの!? みんなすごく心配して、動揺してた。それなのに。
三年でいろんな事が変わる。私だって。あの店だってもうない!あのお店にいたスタッフもフェルだって、もうみんな状況が違うの。」

もう一度、彼の頰に平手打ちする。
「い、、、て。」彼は苦笑して、「2度も殴られるか。」
私は、溢れ出る涙を見られまいと彼の身体を押しやって、部屋を出た。
途中、額賀さんに声をかけられたような気もしたが、私はそのまま走ってそのビルを出た。