「本当にお支払いしなくていいんですか?」

「そういうこと聞かないの。野暮だなあ。」

「ありがとうございます。ごちそうさまでした。」
ぺこりと彼女はお辞儀をする。

「送るよ。」

「ありがとうございます。でも、駅まででいいです。」

「なんで、荷物もあるし。」

「額賀さんにおうち知られて、瀬田さんに伝わったら困りますから。」

「その言い方オブラートに包むとかないわけ?」

「だって、額賀さんのビジネスでしょ?ちゃんと線引きしなくちゃ。」

俺は笑って
「まいったな。 わかったよ、駅までね。」

俺たちは、車の中では仕事の話しかしなかった。
けっこう話してみると面白い子だな。

「仕事で、俺たち会うことはないかもな。分野が違う。」

「そうですね。額賀さんは、テレビとかだとバラエティや歌番組ですか?出版は、OLさん向けの雑誌が主ですか?」

「その通り。君の出入りしているようなメディアは範疇外だから。」

「その副業ともマッチしてますもんね。」

「それ嫌味?」

「え、事実を言ったまでです。」

「だからさあ、意外だったんだよね。」

「何がですか?」

「佑樹と君の接点が。 今までの女の子達と全然タイプが違う。」

「私もそう思います。」