昔は、あんなにイタリアでも俺は女の子に大人気だったのに、今では全く見向きもされない。
そして、今は、逆にあの遥がイタリア男にモテてモテてしょうがない。
フェル曰く、まず、男の場合、いくつになっても自分から女性に声をかけ、とりあえずナンパするのがイタリア人。 そして、いくつになっても、となりの女性を褒めたたえるのが男。
「祐樹は、もともとそんなのしてこなかったし、若い時は黙ってても女の子が寄ってきて必要なかったけど。歳をそれなりに重ねたら自分がセクシーであるためにイタリア男は努力してんの。
祐樹は、職業が作家になったら身なりなんてどうでもよくなっちゃったの!? そんな格好で街をウロウロしないの! 稼いでんならそれなりのちゃんとした格好しなさいよ!!!!今となってはただのダサいおじさんよ。」
なのだそうだ。
「っるせーなー。ちゃんとした場ではきちんとしたそれなりの格好しますよ、俺だって。」
一方、遥は、若い時からスッピンでいたせいもあるし、東洋人は年齢より若く見える。
あのサラサラした黒髪に色白の肌、オリエンタルな雰囲気が、とにかくヨーロッパ人にはウケが良く、目を引くらしい。
まあ、それにほぼ日々俺の愛情が注がれて、女らしい身体つきに磨きがかかり、その辺をイタリア男は見逃さないから、一人で街を歩けばすぐに声をかけられてしまう。
子供を連れていたって、奴らは遠慮なしに声をかけるから、たまったもんじゃない。
俺ばかりが心配するハメになってしまった。


