何週間かたった。


ただただ同じ毎日が過ぎてゆくだけだ。


…そんな毎日にも小さな変化があって、ただただ過ぎている毎日も悪くないと思う。



でも今日は違った。


いつも通りに放課後に図書室に行くと、谷宮君がもう来ていた。



しかも、『バウムクーヘン』を読んでいる。


というか読み終わっていた。


隣に座ると珍しくあっちから話かけていきた。


「お前ってさ、何事もないように生きているわりに、こうゆう暗い本読むよなー。」


あっちは、深い意味もなく言ったのだろう。
でも私の中で、何かが弾ける音がした。



「それってどういう意味?
私が何の苦労もしないで生きている 、って言いたいの?」


「なんだよいきなり。
 

 でもそうだろ?
 クラスでだって何も言わずに人が集 まってくる人気者じゃないかよ。」


そのとたん私は思い出したくないことを思い出した。


「人気者?
 確かにここの学校の人たちは皆いい 人だから話かけてくれた。



 …でもね、前の学校ではかなりひど いことを言われてたんだよ。
 
 苦しかった。
 辛かった。
 怖かった。」



「ごめん。言い過ぎた。
 うらやましかったんだ。
 クラスに馴染んでいるお前が。
 
 
 
 こんな過去があるなんて知らなかっ た。
 もう言わない。
 お前は自信を持って言えるよ。
 人気者だって。
 だから泣くのはやめてくれ。」


私はいつの間にか泣いていたらしい。


「お前は人を惹き付ける力がある。
 おまけにいいやつだ。


 俺とは違って。」


その時私は気づいた。
この人の本当の姿と、


私の気持ちに。



「あなたはいい人だよ。
 だってすぐに謝ってくれた。



 それにー