ハツレン


 嫌がる斉藤をなんとか説得して、椅子に座ら

せた。何か敷くものがあれば良いけど新聞紙が

なかったので代わりにゴミ箱を置く。

「よし、準備オッケ!」

「絶対失敗しないでくださいよ!」

「まかせて~。」

空返事をして、ハサミを入れる。

 静かな部屋にハサミの音とパサリパサリと髪

の毛の落ちる音だけが響く。

「何か喋ってよ。」

「集中してなくて、失敗したら怖いじゃないですか。」

「あっ、」

「え!?ちょっと!?、『あっ』って何ですか!?」

「動かないで、失敗する。」

最後に形を整えてやっと終わった。初めてやっ

たにしては上手く出来たほうかなと、自画自賛

してみる。

「失敗ですか?失敗しましたか?」

「いつまでそこにこだわってんのよ。」

ほら見てみて、と言っていつも持ち歩いてる手

鏡を渡すけど、ちゃんと見えなかったのか男子

トイレに駆け込んでいった。

 しばらくして複雑そうな顔をした斉藤が帰っ

てきた。

「どう?私のハサミさばきは。」

「どうって…切りすぎじゃないですか?」