涙がたまったまま顔を上げる。 見上げた朔の顔は、なぜか悲しい顔だった。 「俺は香子しか好きじゃないよ?」 「で、でも…。」 「でもじゃない。俺は香子しかいらないの。香子がいれば俺はいい。」 「朔…。」 「本当焦ったんだからな?香子が別れるとかいうなんて、もう俺死にそうで…。」 「そんなに…?」 苦しそうな顔で、少し笑みを浮かべながら、朔の手が私の頭に乗る。 出会った時と変わらない、朔の手。 それだけで落ち着く。