もう一度、あなたと…

「私…こんなに笑ったの、久しぶりかも…」

この間、太一と一緒に最後の晩餐をした時も、ここまで笑ったりできなかった。

「…杉野さんとは、笑えない結婚生活だったんですか?」

遠慮もなく聞いてくる。でも、特に隠しておくことでもない。

「笑えなかったよ…いつも別々の部屋で過ごしてたし…」

家庭内別居みたいな感じ。仲が悪かった訳でもないのに…。

「…どうして離婚したんです?」

運転しながら聞く。さすがにホントのことは話せないからーーー

「単なるコミュニケーション不足。宝田君も結婚したら気をつけなきゃダメよ。相手とは沢山話をして、気持ちを伝え合わないと…」

経験者らしい言葉を語った。
黙ってる彼の横顔が神妙。側で見てると、ついからかいたくなった。

「…彼女のことでも考えてる?今日帰ったら、どんな言い訳しようかとか…?」

悪気があった訳じゃない。どんなこと考えてるか、聞いてみたかっただけ。
でも…

「彼女なんかいませんから!」

強い口調で否定された。渋い表情見せられる。
明らかに正しいこと言ってると、その雰囲気が物語ってた。

「…ごめん、調子に乗りすぎたね…」

先に謝る。太一との結婚生活で学んだ大事なこと。機嫌を損ねたら謝る方が賢い。

「…こっちこそ…すんません…大人気なくて…」
 
年下の彼が謝る。
「ひかるの君」と称される人を謝らせるなんて、私くらいのものだ。


車内で楽しい時間を送りながら1時間半後、市内の小京都と呼ばれる町に着いた。

「ここ…確かテレビ番組であった…」

この前、太一と食事してる時に流れてた場所。
思ったより近くにあるんだね…と話したばかりだった。

「レトロな町並みが人気らしくて、一度来てみたいと思ってたんです。…どうですか?こういうとこ好きですか?」
「うん…なんだか懐かしい気がして素敵よね…」

気分転換にはもってこいな場所。
古い店が並ぶ商店街も町並みも、どこか風情があっていい。


(でも、ここ…何だか初めて来た気がしない…)

ーーー朝からの不思議な感覚。
「ひかるの君」の手の感触といい、「エリカ」と呼ばれた時の感じといい、全部…初めてじゃない気がする…。

何故だか分からないけど、この町並みも、誰かと歩いたような……

「…あっ!エリカさん、神社ありますよ!パワースポット!」

商店街の奥に鎮座する、鳥居を指さして彼が叫んだ。

「パワースポットね…まあ間違いじゃないけど…」

休みの度にしてた神社巡り。
この最近は入院してたこともあって、暫くできてなかった。

「お参りして行きましょう!いい事ありますように…って!」

子供みたいにはしゃいでる。
年下の彼がますます子供っぽく見えた。