もう一度、あなたと…

『あんた、部長に相当飲まされてただろ⁉︎ そんでもって俺に送ってけ!って悪態ついてさ…途中でゲーゲー吐くは、ホテルに連れてけって叫ぶは…大変だったんだぜ!』

すぐにバレるだろうと思ってウソをついた。
でも、舞から何も聞かされてなかった私は真に受けて…。

『……ごめんなさい…本当に…ご迷惑をおかけしました…』




「神妙な顔つきで謝られてさー、こっちは嘘だとも言いづらくなって…」

笑ってる「たからがひかる」の顔が輝いてる。
私じゃない私との始まり。
彼の記憶の中にいるエリカは、きっと今よりも、数段可愛いかったに違いない。


「エリカのこと気になりだしたの、それからだったな…仕事は真面目なのに、トロくて不器用で…部長でなくても手を出したくなる要素、満載だった…」


『お前は…いつもどこかしら不器用だよな…』

髪を乾かしながら言った言葉は26才の私に向けて、いつも彼が言ってた口癖だったのかもしれない。
それが32才の私とリンクして、聞いたことがある様に思えたのかも…。


「とにかくな、あの部長とはそんな事があったって忘れるなよ!いざとなったら仕事なんか辞めたっていいんだから、我慢するなよ!」
「…うん…」

頼もしいな…と思う。
太一とはまた違うタイプの男性。
明るくて社交的で、正義感が強くて…。


ーーー本来は…私が側にいるのがおかしいと、つくづく思う。
26才の記憶を持った私が、どこか別の場所にいて、そこはあなたのいる場所じゃないのに…と、恨んでいるかもしれない。

(だから…ホントにお願い…夢なら早く醒めて……)

太一の顔をした別人と仕事をするのも、想像していたより遥かに優しい「たからがひかる」と暮らすのも、どちらも今の自分には似つかわしくない。
32才の私は…そんな事を何も、望んでいなかった…。




仕事を終えてマンションに帰ったら、大きな窓から見える景色がすごく美しかった。

高台にある建物から見える街の景色は、まるで宝石箱のようで…。
あの場所のどこかに本当の自分が眠っていて、目が覚めるのをじっと、待ってる気がしてならない。
何もかも都合のいい様に進む日々が愛おしくなる前に、どうか…目覚めて欲しい…。
今ならまだ…きっと間に合うからーーーーと、つい考えてしまった……。