もう一度、あなたと…

「ホテルに着いて、俺が一番最初に何したと思う⁉︎ 」
「な…何したの…⁉︎」

今更恥ずかしい事も何もない気がしてきた。

「お前のゲロの後始末…色気も何もねぇって話だよ…」

ある意味、部長に任せた方がラクだったかもしれない…と呟く。
それをしないでいてくれた彼に、しみじみ感謝した。

それから服のクリーニングを頼んで、私をベッドに運んだそうだ。
気持ちの悪さから解放された私は、無邪気な顔で熟睡してたらしい。

「呑気な奴だな…って思った。ヘタすると部長の餌食になってたかもしれないのに…」

様子を見てるうちに眠ってしまい、朝になって気づいたら、私は何処にもいなかった。


「逃げたな…って思った」

その気持ちはなんとなく分かる。「たからがひかる」は女子社員の憧れの的。
一緒にラブホから出て来る所を見られたら、ただじゃ済まない…と思ったんだ…。


「あ…あの…私…なんて言うか…今更だけど、ご…ご迷惑…おかけしました…」

26才の自分になったつもりで謝った。
テーブルの向かい側から手が伸びてくる。
サラリと前髪を撫で、おデコを指で弾かれた。

「ホント!迷惑被ったぞ!」

嬉しそうに笑ってる。
私には最悪な出来事でも、彼にとってはいい思い出らしい。

「あの花見会の後、しばらくエリカは俺を避けてたな…。何があったのか確かめようともしないで、逃げ回ってばかりいた…」
「そ、それは…きっと、会わす顔がなくて…」
「覚えてるのか⁉︎ 」

期待を込めた眼差しを向けられた。

「ううん…何となく、そうだったんじゃないかってだけ…ごめん…」

32才の私にはない記憶。でも、性格上のことから想像できた。

「そっか…まぁそうだよな…実際エリカは全く何も覚えてなかったからな…」

呆れた様に笑い出された。
その醜態から一週間後、私は彼を呼び止めた。




『ねぇ…あの…た、たからがひかる!』
『ああ⁉︎ 』




「妙な呼び方する奴だと思った」


26才と32才の自分がリンクする。
「たからがひかる」という呼び方は、お互いに共通したものだった…。




『あの…この間のことなんだけど…』
『ああ、ラブホでの一件⁉︎ 』

そう言うと、私はギョッとした顔で目を剥いた。

『あ…あの…私…何がなんだかまるで覚えてなくて…どうして、あの場所に貴方と居たのかも…謎なんだけど…』
『あー⁉︎ あんだけ人に迷惑かけといて、今更知らねーとか言うのか⁉︎ 』

呆れ返る彼の態度に、私は必要以上に肩を小さくして謝った。

『す…すみません…飲み過ぎてて…ひどい二日酔いで…ホテルから…逃げだす事しか思い浮かばなくて…』

言い訳するのを黙って見てたら面白くなってきた…と、「たからがひかる」はその時の状況を笑って話した。