もう一度、あなたと…

「俺がお前を介抱した花見会のこと、覚えてないって言ったよな?」
「う…うん…」

花見会も何も、そんな風習自体が32才の私の会社ではなかった。

「そこでお前に酒飲ませて酔わせたの、あいつだよ!あのセクハラ部長!」

「たからがひかる」が言うには、太一は私が総務課に勤務し始めた頃からしつこく言い寄っていたらしい。
花見会を企画したのも彼で、半ば強引に私を隣りに座らせた。

「もう一杯もう一杯…って、パワハラみたいに注いでさ。佐藤が連れて逃げようとすると、怒鳴り散らして…最悪だったよ」

断る事もできずにいた私は、缶で言ったら相当な本数を飲んでいたんじゃないか…と「たからがひかる」は振り返った。

「お開きの時間になっても立てないくらい酔っててさ…部長の思う通りにでき上がってた…」





『大丈夫か?高橋くん!』

紳士な態度でいる顔とは裏腹に、スケベな事ばかり考えてたに違いないと「たからがひかる」は憤慨した。

『…う…ん…』

酔って全く立てない私を、さすがの舞も支えきれなかったみたい。

『誰かタクシー乗り場まで連れてってくれない⁉︎ 』

お願いを聞いてくれる者は部署内に一人もいなかった。皆、部長が怖くて逆らえなかったんだ…と彼は言った。

『佐藤くん、いいよ。僕が送るから』

待ってました…とばかりに、腕を肩に回そうとする。
咄嗟にヤバイと判断した舞は、その場にいる「たからがひかる」に助けを求めた。

『「ヒカルの君」お願い!この子、背負ってくれない⁉︎ 』
『俺が…⁉︎』

送って欲しいとせがむ女子達をウザいと思ってた彼は、ジロリと睨む部長の視線をかわして答えた。

『いいよ』

ヒョイと軽そうに背負い、歩き始める。
舞は部長の背中に舌を出し、後をついて来たそうだ。

『…サンキュー、助かった…』

お礼を言う舞にどうって事ない…と答えた彼は、そのまま私をタクシー乗り場まで連れてってくれたそうなんだけど…。





「着くなりいきなり吐いてさ…」

「ウソッ!」

思わず大きな声を出した。
シーッと指を立てた彼が、顔を寄せてきた。

「ホントだって!…しかも、俺の背中でだよ⁉︎ まいったよ、あの時は…」
「ご…ごめんなさい……」

穴があったら入りたくなる。
26才の私は、32才の私よりもはるかにお酒に弱いらしい。

「…さすがにどうしようもなくなって、近場のホテルに直行!佐藤には悪い事はしないって、散々約束させられた」

三人でラブホって言うのもアリだったな…と振り返る。
まさか、そんな事があったとは、考えつきもしなかったーーー。