もう一度、あなたと…

私が神社巡りをしてたのは、厄払いを兼ねての筈だった。
でも26才の私は、お守り集めの為に神社を参拝して廻ってる。
確かに神社ごとにお守りは違ってて、何度か売り場を眺めた事はあったけど…。

(買おうって気にはならなかったんだよね…。そこまで頼らないといけない程、困ってもなかったし…)



神社を巡りながら、いつも太一との関係が良好になりますように…と願ってた気がする。
あの頃の私達は、家でも食事の時以外は別々の部屋で過ごす様になってて、夜もそのまま独りきりだった…。

セックスレス…という言葉は似つかわしくなかった。
ただ単純に、したい…とは思わなかっただけ。
本当に…ただのコミュケーション不足…。



(…だと、思いたかったんだけど……)

嫌なことを思い出しかけて、急いで考えるのを止めた。
あのことは思い出したくない。
あれが原因で離婚したなんて…考えたくない…。


「…食べたか?行くぞ」

立ち上がる「たからがひかる」の背中を追った。
初めてのデート場所だという町並みを歩いて、神社へと辿り着いた。


(…やっぱり…ここもなんとなく憶えてる…)

門前に流れる清らかな小川を目にして思った。
カーブする参道。その先にある本殿。
何もかもが、タイムスリップしたかの様に憶えてる…。

掃き清められた庭を通って、賽銭箱の前に立った。
「たからがひかる」が小銭を投げ入れる。
それに合わせて自分も投げた。

「ほら、エリカ」

鈴の紐を握れと言わんばかりに、目の前に持ってくる。
一緒に振った大きな鈴が、ガラガラ…とうるさい音を立てた。

パン!パン!…と盛大に柏手を打ち、「たからがひかる」が熱心に拝む。その様子を黙って見つめた。

「拝まないのか⁉︎ 」

手を合わせたままこっちを振り向かれた。

「あ…う、うん…拝む…」

パチパチ…と拍手みたいな柏手を打って目を閉じた。
現実のようで、今でも夢を見てるみたいな感覚でいる自分が、神様にお願いしたいこと。
それは……

(どうかこの世界の全てが夢でも…現実とどこか…繋がっていますように…)


望んでいた通りのウエディングドレスを着て、素敵な教会で指輪を交わし、「ヒカルの君」と呼ばれるイケメンの「たからがひかる」とキスをした…。
それらが全部、夢物語で、何もかも明日には違っていたとしても…現実の中で、何かが変わっていなければ生きていける。

(たとえ…一人になってても……)

始まったばかりの新婚生活の初日に、そんな事を願うなんて、私はそれだけ疑り深い人間なんだろう。
でも…どんなに来たことがある場所で…それが彼との過去だと言われても…やはり、どこか不安で…何かが違う気がする…。

これが現実だと「たからがひかる」の言うことが真実なら…握り合った鈴の紐だけでもいい…いつまでも存在していて欲しい。
街角で買った紫陽花の色も、いつまでも覚めないでいて欲しい。

そして何より、隣にいる彼が…いつまでも変わらない笑顔で居てくれることを…強く願うーーー。