もう一度、あなたと…

「…ごめんね…」

申し訳なさが募ってきた。
謝る私の髪を撫でる。
その手をやはり、太一と比べてしまった…。

「謝る必要なんかないって。ゆっくりしてれば思い出す時がくるって!」

励ますように言ってくれる。
それを信じたいのは私ではなく彼本人。

…心から願ってるんだろう。

私にとって、この世界がホンモノだということ。
彼以外の誰とも、結婚などしていないということ……




荷物を片付けて、二人で買い物へ行った。
古い町並みの残る商店街で、遅めの昼食をとる。初めて来た場所で、なんの見憶えもない。
はずなのに……


「…なんだかここ…スゴく懐かしい…」

キョロキョロと連なる店先を眺めて言った。
レトロな雰囲気が、そんな気にさせるのかもしれない。でも、この店の並び自体をどこかで見た気がする。

(写真…それともテレビで…?)

記憶のどこかに引っ掛かってる様な感じ。その呟きを聞いて、「たからがひかる」が喜んだ。

「ここな…俺とお前が初めてデートした場所だよ」
「えっ…⁉︎ 」

驚いて振り向く。
嬉しそうに笑う彼の顔に、安堵の表情が伺えた。

「…あの時、エリカは向かい側の花屋で花を買って、俺にプレゼントしてくれたな」

指さす方向にある小さな花屋。後から寄ってみたいと思っていた所だった。
先を越されたように教えられ、ドキッと胸がときめく。

「6月の梅雨前だったかな。記念に…って、大きな青い花をくれて…」

あれと同じだったかな…とバケツを指さす。
ブルーの紫陽花が咲き誇ってる。
幾つか買いたいな…と思っていた所まで似通った。


……夢だと思ってる世界で、初めての過去と遭遇した。
太一とじゃない。「たからがひかる」との過去…。
それは不思議なほど深く脳裏に刻まれてて、今の方が現実だと言わんばかりに主張する。

「…エリカはこの町並みが気に入って、『近くに住みたい!』って言いだして…」
「それで、あのマンションにしたの⁉︎ 」

もしかして、また私の都合に合わせたのかと思った。
やっと現実かもしれないという一つの証拠に出会ったのに、それがまた顔を出すのかと不安になった。

「それで…ってことはない。たまたま。偶然だよ」

「たからがひかる」の言葉にホッとする。
積み重なっていく都合の良さが気にならない訳ではないけど、それ以上に、好きになれそうな町並みだった。