もう一度、あなたと…

『…くそっ!』

吐き捨てるような声がして振り向いた。悔しそうな顔をしている太一。
そんなに怒らせてしまってたのかと、すごく反省させられた。

『た、太一君…あの……』

声をかけようとしたら手で止められる。
かかってきた電話に出る彼の顔が、ほんの少し嬉しそう。
言葉少なく会話して、くるっとこっちを振り向いた。
怒ってた顔が笑ってる。それにドキッとさせられた。

『バイト替わってもらった。一緒にいてやるよ』

電話をポケットにしまい込みながら話す彼に驚く。
怒ってるんじゃなかった。
友達と連絡つかなくて、イライラしてたんだ…。

『い、いいの…⁉︎ バイト代、倍出るんでしょ…⁉︎ 』

さっきの自分のセリフを棚に上げて聞いた。
太一は私の肩を抱き寄せて、力強い言い方をした。

『お前の方が大切だからいいんだよ!』

照れを隠すようにそっぽ向く。
ぶっきら棒な優しさが伝わってきて、ジワッと涙が浮かんだ。

『…ありがとう…太一君……』

きゅっ…としがみついた彼の胸の音が速くなる。
それまで恋人未満だった関係が、急に近づいた…。


小さなケーキを買って、太一のアパートへ行った。
初めて上がる彼の部屋は意外にもスゴくきれいで、いつもこんななのかと聞いた記憶がある。

『俺は汚れた部屋じゃ眠れないんだ!』

潔癖症…とまではいかないけれど、どちらかと言うと神経質な太一らしかった。

ケーキのローソクに火を点ける。
明かりを消した部屋の中で灯る火を見つめながら、ローソクに照らされてる太一の顔が、いつもよりスゴく優しく見えた。
その彼に触れたくなって、手を伸ばすと…

『…触んな!』

寸前で拒否られてビクついた。
伸ばしてた指先を縮めて、彼を見つめた。

『…触られたら多分、抑えきかねーから…!』

目も見ずに言う彼に、心から触れたいと思った。
誠実な太一に…自分の初めてをプレゼントしてもいいと感じた…。


『お願い…手…握って…』

ドキドキしながら頼んだ。
引っ込めるのも躊躇われてた手を、恐る恐る握り返される。

きゅっと力を込める。
胸の音が耳の奥で大きくなっていく。
それを聞きながら、彼に寄り添った…。

『太一君なら…いいよ…私……』


厚い胸板に凭れると、太一の心臓の音がすごい速さで鳴ってるのが聞こえた。
肩を抱く手が震えてる。
お互い、初めてな者同士。
探り合いながら、一つになったーーー