私達が結婚式を行わなかったのは、結婚して2年目に太一のお父さんが急死したからだ。
くも膜下出血であっという間だった。
なす術もなく最期を見送ったお母さんは、その後体調を崩して入院した。
そして、まるで後を追うように亡くなった…。
片方の両親が亡くなった手前、式を挙げるのも躊躇われて、私は両親と相談した結果、式は挙げないと決めた。
でも、それが太一のプライドを傷つけたみたいで、彼は私の実家へも足を運ばなくなった。
娘の晴れ姿を見せることもできない自分に腹を立てていたのかもしれない。
家でもすっかり無口になって、必要以上は喋らなくなってしまった……。
(ご両親が生きてたら、こんな日を迎えられていたのかな…)
目の前で談笑する両親や親戚たちを眺めて思った。
幸せが膨らむような気配を肌で感じながら、心はどんどん萎んでいく。
話す言葉も出なくなり、黙って俯いた。
「疲れた?」
不意に聞かれて隣を見る。
シルバーのタキシードを着た「たからがひかる」が顔を覗かせた。
「記憶もないまま顔見せってのも辛いよな」
手に持ったグラスを渡される。細かい泡の立つ金色の飲み物が入ってる。
「エリカの好きなジンジャーエール。これ飲んで落ち着け」
ニッコリ笑ってる。今の私と32才の私がリンクする。好きな物は、夢も現実も同じらしい。
「ありがとう…」
お礼を言って一口飲んだ。
炭酸が喉をチクチクと刺しながら通っていく。少し辛味の強いジンジャーエールの後味が、口の中をピリリと痺れさせた。
「…エリカ…」
優しい声に振り返る。
眩しいような微笑みを浮かべる「たからがひかる」が寄り添ってる…。
(私…どうしてこの人と結婚しようなんて思ったんだろう…)
初対面は散々だった筈なのに、何故…?と思う。
夢の中の私は、一体、彼のどこが気に入ったんだんろう。
「止せよ」
急に口走った言葉に驚いた。
同じ飲み物の入ったグラスで顔を隠す。照れた仕草は可愛くて、胸が少しキュン…と鳴った。
「…そんな顔で見るな。ハズいから」
「え…⁉︎ 」
そう言われると困る。
自分がどんな顔してたかなんて、こっちはサッパリ分からないんだから。
面識も殆どない「たからがひかる」が目の前で照れている。
しかも、自分の視線を感じて…。
(これが現実の世界なら、絶対に舞が羨ましがる展開だ…)
舞は入社式以降、彼がすっかり気に入って、事あるごとに情報を集めてた。
そして、それを昼休みの女子会で発表してた。
その時に、あの話題になったんだ。
『人生やり直せるならどこからがいい?』
女子達は自分の人生をあれこれと振り返りながら、自分の意見を言っていた。
結婚から10年目。つい先週、離婚届を出したばかりの私は、そんな皆の意見を聞きながら、自分の結婚生活を思い出していた。
くも膜下出血であっという間だった。
なす術もなく最期を見送ったお母さんは、その後体調を崩して入院した。
そして、まるで後を追うように亡くなった…。
片方の両親が亡くなった手前、式を挙げるのも躊躇われて、私は両親と相談した結果、式は挙げないと決めた。
でも、それが太一のプライドを傷つけたみたいで、彼は私の実家へも足を運ばなくなった。
娘の晴れ姿を見せることもできない自分に腹を立てていたのかもしれない。
家でもすっかり無口になって、必要以上は喋らなくなってしまった……。
(ご両親が生きてたら、こんな日を迎えられていたのかな…)
目の前で談笑する両親や親戚たちを眺めて思った。
幸せが膨らむような気配を肌で感じながら、心はどんどん萎んでいく。
話す言葉も出なくなり、黙って俯いた。
「疲れた?」
不意に聞かれて隣を見る。
シルバーのタキシードを着た「たからがひかる」が顔を覗かせた。
「記憶もないまま顔見せってのも辛いよな」
手に持ったグラスを渡される。細かい泡の立つ金色の飲み物が入ってる。
「エリカの好きなジンジャーエール。これ飲んで落ち着け」
ニッコリ笑ってる。今の私と32才の私がリンクする。好きな物は、夢も現実も同じらしい。
「ありがとう…」
お礼を言って一口飲んだ。
炭酸が喉をチクチクと刺しながら通っていく。少し辛味の強いジンジャーエールの後味が、口の中をピリリと痺れさせた。
「…エリカ…」
優しい声に振り返る。
眩しいような微笑みを浮かべる「たからがひかる」が寄り添ってる…。
(私…どうしてこの人と結婚しようなんて思ったんだろう…)
初対面は散々だった筈なのに、何故…?と思う。
夢の中の私は、一体、彼のどこが気に入ったんだんろう。
「止せよ」
急に口走った言葉に驚いた。
同じ飲み物の入ったグラスで顔を隠す。照れた仕草は可愛くて、胸が少しキュン…と鳴った。
「…そんな顔で見るな。ハズいから」
「え…⁉︎ 」
そう言われると困る。
自分がどんな顔してたかなんて、こっちはサッパリ分からないんだから。
面識も殆どない「たからがひかる」が目の前で照れている。
しかも、自分の視線を感じて…。
(これが現実の世界なら、絶対に舞が羨ましがる展開だ…)
舞は入社式以降、彼がすっかり気に入って、事あるごとに情報を集めてた。
そして、それを昼休みの女子会で発表してた。
その時に、あの話題になったんだ。
『人生やり直せるならどこからがいい?』
女子達は自分の人生をあれこれと振り返りながら、自分の意見を言っていた。
結婚から10年目。つい先週、離婚届を出したばかりの私は、そんな皆の意見を聞きながら、自分の結婚生活を思い出していた。

