イジワル王子の甘い嘘




今、莉奈の名字が聞こえたような気がした。


なんで莉奈のことを呼んでんだよ。あいつは今日、風邪で休みなはず。

朝送ったメッセージにいまだに反応しないし、きっと莉奈は家で寝込んでいると思っていたのに。




「あ、あの……!!」



「は?今頃怖い思いして泣き叫んでると思ってたのに、何呑気に読書なんかしてんだよ」



「余裕だねー。やっぱり王子が助けに来てくれるの待ってて調子乗ってたんだ」



「ていうかこんな状況で本なんか読めるなんて、やっぱり若原さんは神経図太いね」




なんで莉奈の声が、教室の中から聞こえてくるんだよ。




「……あの野郎!!」



「待った、落ち着け愛斗」




今すぐにでも莉奈を助けないと。

俺の“幼なじみ”を傷付けるわけにはいかない……!!


そんな思いが俺の中を駆け巡っているのに、空き教室に飛び込もうとした俺の腕をなぜか直樹が掴んだ。




「なんだよ直樹。あの中に莉奈がいるんだぞ?離せ!!」



「だから落ち着けって。今の会話聞こえてなかった?」



「なんだよ!」



「たぶん莉奈ちゃんは、お前絡みで何かに巻き込まれてる。愛斗が今飛び込んだって、根本的な解決にはならないと思う」




「だから莉奈ちゃんに危害が及んでない今は、少し様子を見よう」と言い残し、直樹は俺の腕に力を込めた。