数日後。

ユウはマユに呼び出され、先日のバーのカウンター席に座ってグラスを傾けていた。

「で、10年もの間、音沙汰もなしにどうしてたのよ?急にいなくなっちゃうからビックリしたのよ。」

マユは白ワインのグラスを手に、ユウに問い掛けた。

「ああ…うん…。」

仲の良かった友人たちにも何も言わずに単身渡英した10年前を思い出すと、苦い思いが胸に広がる。

「ちゃんと話してよ。また会えたのも何かの縁だし。」

ユウは何から話せばいいのかと言葉を探していた。

「高校時代にやってたバンドで、よくライブやってたライブハウスのマスターとヒロさんが友人で…何度もオレたちのバンドのライブに足を運んでくれてさ。ヒロさんがロンドンで活動するから、ギタリストとして一緒に来ないかって誘ってくれたんだ。高校卒業してからでもいいって言ってくれたんだけど、オレとしてはすぐにでも行きたくて…。」

そこまで話すと、マユはふうっと息をついた。