太陽と月に分けられて



蘭:『お、お邪魔します…』


そっと鍵を開け、扉を開ける。

緊張しながらも、蘭は静かに玄関に入る。


?:「光輝、帰ってきたのか?」


向こうの広い部屋の奥から、聞き覚えのある声がする。

蘭はそのこえに驚いて、大急ぎで靴を脱ぎ、奥へ走っていく。

そして、ソファに寝転んでいた男を見て叫んだ。


蘭:『先生!?』

拓:「よ、米崎…!?」


思っていた声より高く、更に知り合いの声だったからか、拓也が驚いて蘭を見上げる。

それから、気まずそうに頬をかく。


蘭:『ど、どうしてここに?』

拓:「…………………」


拓也が黙っていると、玄関の方から優しい声が聞こえてきた。


光:「馬鹿、子供じゃないんだから、ちゃんとしろ。」

蘭:『え!?櫻井先生!?』


普段の光輝からは出てこないような言葉遣いに、蘭が驚いて少し跳ねる。

光輝は苦笑してから、ソファに座る。


光:「米崎さん、床で申し訳ありませんが座ってください」

蘭:『え、あ、はい…』


有無を言わせない光輝の真っ直ぐな言葉に、蘭が従う。

拓也は寝転んだまま、全く何も話さない。

それどころか、光輝を床に落とそうと足を器用に動かしている。


光:「…いい加減にしろよ?クズはクズらしく僕に従え」

拓:「…何だと?ニコニコ気持ち悪い笑顔振り撒きやがって、ナルシスト」


光輝が拓也の足をつかんで、ソファから落とす。

拓也は声を出す間もなく、ドンっと痛々しい音をたてて落ちた。


拓:「っつ……」

光:「そういうことは、僕から『理科』を奪ってからにしてくれ。それ以外は君に譲ってやってるんだ」


光輝が上から拓也を見下ろす。

いつもの光輝からは想像できないほどのキャラに、蘭は黙って見つめていることしか出来ない。