男のノートをポストらしきものに入れ、蘭は自分の部屋へ戻ろうと廊下を歩いていた。


完:「らーんちゃん!!」


甘ったるい声と同時に、蘭に温もりと衝撃が加えられた。

そして、完二が標準語で蘭に話す。


完:「何処か行ってたの?確かあっちって…ああ、先生の所かぁ」

蘭:『か、完ちゃん…!?ど、どうしたの!?』


蘭は驚いて、首を後ろにひねる。

完二は蘭の首からそっと手をどけて、笑顔で言った。


完:「何って、友達がいたから話しかけただけだよぉ?」

蘭:『ああ、なるほど…』

完:「それに、こんな人の少ないところ、一人で歩いてちゃ危ないよ?」

蘭:『大丈夫、大丈夫』


完二が子犬のような目をする。

それを作り物と分かっている蘭は、ぎこちない笑顔で返した。


完:「僕の大切な友達だからね、誰かに傷つけられたら……」


完二がそう言って、蘭の手をギュッと握る。


完:「許せへんよねぇ…?」


軽く関西弁の入った低い声で、蘭に笑いかけた。


だが、その目は蘭の向こうを見ているようだった。