蘭:『出ないなあ……』


蘭は拓也の部屋のインターホンを押すが、出る気配はいっこうにない。

何日も前、蘭は勉強を終えたあと眠ってしまい、拓也に運ばれてきたと言われていたので、拓也にお礼を言いに来たのだ。

だが、朝も昼も放課後も拓也は蘭に話しかけることも近づくこともなく、何処かへ行ってしまった。


蘭:『うーん、いないのかな?』


蘭が部屋に戻ろうと、後ろを向いた瞬間、大きな声が向こうから聞こえる。


?:「三上せんせー!!!!」


漫画で見るような、髪型も顔も整った男が走りながら蘭の方へ向かってくる。

蘭は驚いて、さっとそれを避けた。

男は息を切らしながら、パッと前を向くと、目の前に蘭が映った。


?:「ん??君、三上先生に会いに来たの?」

蘭:『あ、はい…』


ケロッとした顔で、男が蘭に話しかけた。

ユニフォームを着ていることから、部活の始まる直前か途中なのだろう。


?:「あ、先生にこれ…渡してもらっていいかな?」

蘭:『え?あ、いや、先生がいな…』

?:「じゃ、よろしくね!よし、君みたいな可愛い子と話せたし、バスケ頑張らないと、じゃあまたね!」


時間が無いのか、蘭にノートを押し付けて、とっとと何処かへ走っていってしまった。

蘭はしばらくそれを見つめていたが、ハッとして手元のノートを見る。

それから、開かない拓也の部屋を見つめた。


蘭:『はぁ……ポストに入れてればいいかな?』