拓:「お、今回はちゃんと来たな?」

蘭:『自分からサボったことありませんけど?』


月組寮の隅にある部屋、そこが三上拓也の部屋である。

教師は寮で暮らしても、自宅に帰宅するのも自由とされている。


とてもシンプルで、必要なもの以外置かれていない部屋を蘭が見渡す。

すると、キッチンに大量の飴があることに気付いた。


蘭:『本当に作ってたんですね』

拓:「おう、当たり前だろ」


返事を返しながら、小さな机を出してくる拓也。


拓:「ほい、座れ」


蘭に手招きをして、すっと座る。

手に引き寄せられるように、蘭も机の前に座った。

すると、プリントが2,3枚渡された。

ところどころが虫食いになっており、重要な部分が抜けている。

それから、拓也が小さなホワイトボードを机に置き、文字を書いていく。


拓:「とりあえず、歴史だな。いいか?この時代には…」


綺麗な文字がサラサラとボードに書かれていく。

蘭はそれをじっと見つめて、頭の中に必死にいれようとする。

だが、そんな努力をせずとも、頭の中にスッと拓也の声や文字が入ってくる。


拓:「…わかったか?」

蘭:『え?…は、はいっ』


蘭の返事を聞いた拓也はフッと笑って、また話を進めていく。

その優しくて心地いい声を聞きながら、蘭は虫食いを埋めていった。