午後の最後の授業も終わり、拓也が教室へと帰ってきた。
相変わらず気だるげで、よくこれで教師がつとまるものだと思える蘭。
これが格好いいのだと黄色い声をあげる女子もいるが、蘭にはどうしてもそう思えなかった。
蘭の顔が赤くなるほどの笑顔を作れる時があるのに、何故いつもこんなに面倒くさそうに世界を見つめているのか。
何故そんなに目の奥が濁っているのか、どんな気持ちでその顔をしているのかが蘭には分からなかった。
本当に彼がやる気の無い人間なら、蘭はこの男と仲良くしているなんて絶対に思えない。
なら、彼は何なんだろうか?
何かが彼をそうさせているのか?
どこを見つめているのか分からないまま話をしていく拓也を見つめながら蘭は考えていた。