蘭:『楽しかったね!一泊宿泊!』

圭:「全く楽しく無かったよ」

凛:「私は楽しかったですよ…!」


バスを降りて月組の三人は、
寮に向かって歩いていた。

他の生徒たちもそれぞれの寮部屋へと
絵顔で向かっている。


圭:「二度とあんなのいかねえ」

蘭:『そんな、楽しかったもん!!』

圭:「何も楽しくねえよ…!!」

蘭:『楽しかったもん!!!』

圭:「だからなぁ……」


二人が睨み合って言い合いを始め、
凛が必死に止めようとしていると


どこからか綺麗なヴァイオリンの音が
聞こえ始めた。

繊細ですぐ触れば壊れそうな音が、
目の前にある太陽組の寮を包んでいく


その音に覚えがあるのか、圭太が
寮の方をじっと見つめる。

その顔は少しばかり嬉しそうなので、
凛は首をかしげた。


圭:「…ほら、とっとと帰るぞ」

凛:「は、はいっ…!」


圭太がさっさと前を歩いていく。

それに凛が慌ててついていった。


圭:「おい、蘭行くぞ」


圭太が後ろを振り返らずに蘭に言う


蘭:「うん、分かった!」


蘭の頬に涙が流れていたことを
圭太が知っていたのか否か
決して振り向くことなく歩いていった