太陽と月に分けられて



蘭:『わっ、き、君、怪我してるの?』


見た目より随分大人びいた、綺麗な
ワンピースを着た女がひょこっと顔を
覗かせる。

僕はすぐに笑顔を作って、言い訳を
考える。


完:「さっき転んじゃって…だから、
ここで休んでたんだ」

蘭:『でも、それなら、そんな風に、
弦は、切れないよ?怪我も…?』


女は少し僕に怖がりながら、遠慮気味
に言った。

確かに、弦は力づくで切られたような
乱暴な壊れ方をしとる。

それに気づいたことに僕は驚いて
その子の顔を見つめた。


完:「…名前は?」

蘭:『………蘭』


僕は今日のプログラムの中に、
蘭という言葉を検索して、探す。

確か、ヴィオラの天才と呼ばれている
金持ちどもとは違う存在だったはず。


完:「蘭か…演奏は後半やったな?」


僕はつい関西弁で話してしまった。

だが、蘭は気にすることもなく、
少し照れながら長い髪をいじる。


蘭:『う、うん…』

完:「ふぅん…いたっ」


無意識に触った右の頬にズキッと
痛みが襲ってきた。

右手を見ると、少し血がついていた。


蘭:『あ、ちょっと待って…』


蘭が僕の方に駆け寄って、絆創膏を
ポケットから取り出す。

僕は恩を売られて、何かを返せと
言われるのが嫌でそれを断った。

だが、蘭は引き下がらず、真っ直ぐと
僕を見て言った。


蘭:『我慢はダメだよっ!!』

完:「え…」


僕が呆気にとられている間に、
蘭がサッと頬に絆創膏を貼った。