完:「おい、圭太待ちいや」


レッスンが終わって帰ろうとする圭太
を止める。

圭太は顔だけ振り返って僕を見る。

僕は炭酸飲料を圭太に投げつけて、
自分の炭酸飲料を開けて飲む。


圭:「何だ、猫かぶり?関西弁は直せ
と母親に言われたんだろ?」

完:「お前には関係ないやろ、…まあ
気を抜けるんはアンタぐらいやしの」


圭太は微塵も嬉しそうにせず、
むしろ嫌そうにして炭酸を一口飲む。

僕もコイツを好きという訳ではない。

むしろクールぶってるみたいで腹が
立ってくる。

お互い嫌ってるからこその、信頼や
安心感みたいなんがある。

年が同じいうのもあって、僕等はよく
話す仲でもあった。


圭:「演奏会、頑張れよ」

完:「お前も出えや、俺と二重奏でも
やりゃ、そこそこいけるやろ?」


俺の誘いに驚いたのか、圭太が目を
細めて俺に言う。


圭:「何か計算してんのか?」

完:「たーだ、誘っただけや」


その言葉に腹が立ち、僕は圭太を
グッと睨む。

圭太は楽器の入ったケースを見て僕に
言った。


圭:「母さんが俺のを聞きたいって
言ってたから…」

完:「そうか、なら僕はつまらん実力の
無い金持ちどもの演奏会行っとくわ」


圭太に皮肉と、演奏会への愚痴を
込めて僕は言った。

僕たちの行く演奏会は、ほとんとが
下手な金持ちの子供であり、本当の
実力を持った子供はほとんどおらん。


圭:「せいぜい、そいつらを見下して
こればいいだろ」

完:「僕みたいな金持ちで顔が良かった
ら声かけられすぎて大変やからなぁ」


その言葉に圭太がピクッと反応した

その悪い目付きと甘いマスクに騙され
寄ってきた女を泣かす程の俺様我儘な
男が僕を睨む。


圭:「…それは俺への嫌みだな?」