先:「凄いわ!完二君!!あなたの
ヴァイオリン技術は先生の誇りよ!」


化粧を塗りたくって皺を誤魔化してる
ババアが僕に手を叩く。

僕は愛想笑いをしながら、先生に
可愛らしくお辞儀をする。


別にヴァイオリンが嫌いな訳やない

むしろ好きな方やと思う。

不思議なことに、音楽っちゅうやつは
夢中になる、リラックスできる、
僕にとっての安らぎになっとる。


完:「先生の教え方っ分かりやすくて
とっても、楽しいですっ!」


6歳らしい可愛らしい仕草と話し方で
僕は適当にババアに返す。

ヴァイオリンは本間に上手いほうやと
僕自身でも思う。

このレッスン教室では一番やと、
…まあ、同じくらいの奴ならおるけど


先:「圭太君も素晴らしいわ!!!
本当に、二人は先生の自慢よ!!」

圭:「っす……」


隣の圭太が半分上の空で返事をする。

どこか上の方を見てボーッとしている

僕のフワッとした茶髪とは反対の
ボサッとした黒髪や。


圭:「先生…俺、今回の演奏会、用事で
出ません」


何が用事や、面倒くさい言うて出やん
だけの適当野郎が。


俺はグッと圭太をにらむ。

そんな僕が嫌いなんか、圭太が僕を
にらみ返した。