圭太が両手に抱えてた蘭を
部屋のベッドにそっと下ろす。

それから、タオルを蘭の頭に投げる。

だが、蘭はタオルを被ったまま
まだ動く気配がない。


圭:「おい、そろそろいい加減に…」


圭太が舌打ちして
蘭の顎を持ち上げる。


圭:「…っ!?」


圭太の目線の先には
ニコッと笑っている蘭がいた。


蘭:『こんなことされるのが、私でよかったあ…。神谷さんが代表者になってたら危なかったかもだしね』

圭:「な、何でんなこと言ってんだ?悔しくねえのか?」


驚きすぎて蘭から目を離せない圭太。

蘭の顎に添えてた手を頬へとずらす。


蘭:『うん、私はされても仕方ないからね、悔しくないよ?』

圭:「……何だそれ」


圭太が蘭の濡れている髪を触る。

蘭は笑顔のまま動かない。

だが、その笑顔の裏には十分な
悔しさと恐怖が積もっている。

圭太が蘭をじっと見つめて呟いた。

圭:「…そうか、俺と同じか」


圭太がギュッと蘭を抱き締める。


蘭は驚いて目を丸くするが
すぐ涙目になり圭太にしがみつく。

少し早い鼓動が耳元で鳴る。

人は鼓動を聞くと落ち着くと
言われているが、蘭は初めて
その心地よさを知った。