‘明保野亭’
そう打ち込んだ時に出てきた文字は
‘該当する候補がありません’
であった。
落胆の色を覚える。
しばらく、ワードを変えて試しながら調べなおしたが、意にそぐわないようなものばかり。
なかなか納得のいくものが出てこなかった。
「はぁぁぁぁ……。」
「何をそんなに大きなため息をついているんですか?」
ため息をついた瞬間、いきなり後ろで声をかけられる。
驚いて振り返ると、そこには出入り口の柱に寄り掛かった総司がいた。
私は慌てて手に持っていた電子辞書を後ろに隠す。
「どうしたの、総司?」
「美奈さん、今、何か隠しましたよね…?」
「え…?」
やっぱりばれたか…。
そう思った。
「隠した物、見せてください!!」
そう言って、私からひょいっと電子辞書を奪う総司。
「ちょっ、総司!!
返してっ!!」