「え、永倉さん、知ってたんですか…?
馬詰親子の事。」
「あぁ。
そりゃあ、親子揃ってあんなに風当たりが強かったんだ。
他の幹部たちもあの親子の事は知っていたよ。
それに、息子が大層綺麗な顔つきをしていたからな。
武田観柳斉がうるさかったわけだよ。」
私は、あぁ…。武田さんね、と頷く。
武田さんは、ここでは有名な男色家。
いわゆる、現代で言うホモである。
武田さんの男色っぷりは他の隊士がかなり迷惑していた。
それでも彼は、優れた文才を持っているため、5番組組長とかなり重宝されている。
「まぁ、これからあの親子追っかけても、無駄足だからな。」
「そうですよね。
1日も経っていれば、どこにいるかなんて消息、なかなかつかめないですもんね。」
「あぁ。
本当は捕まえてきて、切腹させるのが妥当なんだがなぁ…。
それに、平助も総司もこの状態じゃあな…。」
永倉さんはどこか遠くを見て呟く。
平助君、はやく目覚めないかな…。
私が考えていることと永倉さんが考えていることが同じだったのか、
「とりあえず、あいつらがはやく目覚めるといいな。」
と言い、私の頭をポンポンとして去っていった。


