でも、そんなことをしたって特に何も異常は見つからない。
あまり気にするのも良くないと思い、私は掃除を続けた。
7月。
まだまだ暑さが長引くころ。
私は忘れていた。
しばらく何事もなく平和で過ごしていたことから、この時代。
そう、今ここにいるこの時代が幕末の動乱の世であることを。
掃除を終え、暇になったため稽古をしている道場に向かう。
今日は確か総司が稽古をつけてるんだっけ?
むわぁんとした汗のにおいと熱気が立ち込める道場に足を踏み入れた。
ぱぁぁん!!
と乾いた竹刀の音が響く。
「ほら、次!!」
そう言いながら稽古をつける厳しい総司。
私は出入り口のすぐ横の壁に寄りかかり、稽古を眺める。
「――やっぱり、総司の稽古は容赦がないなぁ…。」
誰にも聞こえないような小さな声で呟く。
すると、稽古を終えた総司がこっちに近づいてきていた。
「美奈さん!!
久しぶりに手合せしませんか?」
目をキラキラさせているのが防具越しにもわかる。


