それから数刻が過ぎた。
皆はすでに散り散りになっていたが、また、近藤さんの部屋に呼び寄せられる。
「会津藩士の柴司が切腹した。」
たった一言、近藤さんから告げられるその言葉。
皆は押し黙る。
「明日、会津藩で執り行われる葬儀に参列する。」
皆はそれを聞き、それぞれの部屋へ戻っていった。
翌日、柴さんは金戒光明寺に埋葬された。
その日、なんとなく平助君の傍にいた私。
「平助君、なんでこうやって人は死なないといけないのかな。
切腹なんて、なければいいのに…。」
ふと呟く。
「この時代には、これが当たり前なんだ。
新撰組にも局中法度があるように、その藩にも決まりはある。
柴さんは切腹をしたことで、会津藩と土佐藩の衝突を避けた。
覚悟は、きっとできていたはずだよ…。」
「うぅっ…。」
ぽろぽろと零れ落ちる涙。
それを見た平助君は、そっと私の涙を拭ってくれた。
のちに明保野亭事件と言われるこの出来事は、現代の人たちにあまり知られることがない事件だった。
だが、この明保野亭での出来事は、二人の犠牲者をだして終結した。
それから、池田屋の残党の情報は得られず、目立った動きが見られなかった。
この明保野亭事件を最後に、池田屋事件が関連した事件は終わりを迎えたのであった。